2017-08

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シュリンク社会の活性化に有効な処方箋

■全面施行から5年経過した景観法

今から5年前の2005年6月1日に景観法が全面施行され、これを記念して6月1日は景観の日に制定されている。皆さんはご存じでしたか?
現在、景観法に基づく「景観行政団体」(*1)には445団体が移行し、「景観計画」(*2)は231団体で235の計画が策定されている(2010年4月1日時点)。

5年間の推移を見ると、景観計画を策定した団体数は順調に増加し、政令市や中核市では6割以上の団体で、その他の市区町村でも1割を超える団体で景観計画が策定されている。都道府県の景観計画区域に含まれる市区町村を含めると市区町村のほぼ半分の団体で景観計画が運用されていることになる。今後5年間の策定意向を見ると、政令市や中核市はすべてが、その他の市区町村でも500を超える団体が景観計画を策定する予定である。

このように、景観法の制度の活用は順調に進んでいるものの、法律の制定による効果、とりわけ景観計画の策定によるまちづくりの効果がなかなか発現していないのも現実である。というのも、景観計画が策定されたからといって、景観形成に関する方針に沿った建築などの“行為”が発生しなければ、まちなみは変わらないのである。良好な景観が創生できなければ、交流人口の増加や地価の上昇などの経済活性化効果も生じない。また、高さや色の規制によって、まちなみを阻害する高さや色彩などの“おかしな”建築物の新たな出現を予防する効果はあるが、既存不適格の案件に対する即効性はない(一般に建築物の更新サイク ルは20~50年といわれている。*3)。京都市の新景観施策が50年後、100年後の未来を想定しているように、景観法の活用は長期的な視点で見守らなくてはいけない。これに対し、短期的に発現する効果として、住民の景観に対する意識の高まり、地域に対する満足度の向上、コミュニティ活動の活性化などの波及効果が挙げられる。景観まちづくりを進める際には、住民の合意形成は不可欠であり、地域の価値を発見・共有することがその礎となる。このように景観法の活用は、長期的には良好な景観形成が目標となるが、短期的には地域のアイデンティティ確立に大きな効果がある。それゆえに景観法の活用は、まちづくりにおいて重要な役割を担うのである。

一例を挙げれば、三春町(福島県)や小布施町(長野県)はともに人口2万人に満たない小さなまちで、三春町は郡山市、小布施町は長野市、というようにそれぞれ大都市に隣接していながら、ともに景観法の施行以前から連綿と景観まちづくりを進めてきた。その結果、地域のアイデンティティが確立し、良好な景観が集客力や知名度を向上させ、市町村合併を選択することなく、まちの自立を可能としている。これからのシュリンク社会(人口減少社会・低成長社会)において、とりわけ地方都市・中小都市では、これまでのような開発型の施策ではまちの課題を解決することは難しい。景観形成を主眼としたまちづくりはまちの活性化の有効な処方箋になるものと考えられる。

とはいえ、近年、所有者の高齢化や相続、人口減少による担い手不足などの要因により、全国各地で歴史的建造物が急速に滅失し、良好なストック景観が失われつつある。また、伝統的なまちなみにそぐわない電線類や、細街路における通過交通による安全性の阻害など、規制・誘導が政策目的の主な実現手段である景観法の枠組みだけでは解決できないまちづくりの課題も存在するのである。

ここで景観法を補完する役割を担うのが、「地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律(歴史まちづくり法)」である。2008年11月に施行された歴史まちづくり法は、市町村が歴史的風致維持向上計画を策定し、国の認定を受けることによって、法律上の特例措置や各種事業による支援などを受けることができる制度で、2010年4月1日時点で16計画が認定されている(*4)。歴史まちづくり法を適用することにより、歴史的建造物の保存・活用など具体的な事業を通じた地域固有の歴史的資産を活用して市街地の活性化を図ることが期待される。とりわけ、地方都市・中小都市が疲弊していくなかで、景観法による規制・誘導の制度だけではなく、これからは地域固有の資源を活用していくためのポジティブな仕組みを強化していくことも求められる。最近では大学が地方都市に入り込んで、ワークショップなどの手法を用いて景観資源の発掘・再発見やデザイン誘導を試みている例が多く見られるが、先に紹介した小布施町でも、町と大学が協働して東京理科大学・小布施町まちづくり研究所を開設して、まちづくりを進めているところである。このような大学との連携も、景観まちづくりにおける強力な牽引役となることが期待される。


(*1)景観行政団体:景観法に基づく制度を活用できる団体のことで、都道府県、政令市、中核市および都道府県の同意を得たその他の市区町村。

(*2)景観計画:景観法に基づく重要な制度で、対象区域を定めたうえで景観形成に関する方針と建築などの行為の基準を設定し、区域内の建築などの行為に対して届け出・勧告制度を適用することにより、良好な景観を形成しようとする仕組み。1つの団体が複数の計画を策定しているケースもある。

(*3)屋外広告物についてはこの限りではない。

(*4)歴史的風致維持向上計画が認定された市町村:京都市、金沢市、高山市などの誰もが認める著名な市町村以外に、甘楽町(群馬県)、桜川市(茨城県)、佐川町(高知県)など、全国的にはあまり知られていない固有の歴史的資源を活用してまちづくりを進める事例も見られる。

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▲三菱総合研究所 Thinking TODAY 2010年6月10日(木)
 社会システム研究本部 主任研究員 椿 幹夫
http://www.mri.co.jp/NEWS/column/thinking/2010/2019363_1805.html

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