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2020-04

生命の宝庫:コスタリカの挑戦

■森林保護へ報奨金 20年で国土の5割に回復

コスタリカの首都サンホセから南東に約65キロ。緑の山に囲まれた標高2000メートルの谷間に、養鯉(ようり)業などを営むセーサル・ビンダスさん(55)、ソニア・チャコンさん(53)夫妻の自宅が建つ。結婚翌年の約30年前、約120ヘクタールの土地を購入。12ヘクタールを牧草地や果樹園として使い、残りは森のまま保存している。大部分が原生林で、バクやイノシシ、シカの仲間など多くの野生動物が生息し、時にピューマも現れる。ソニアさん は「前の地主は木材を切り出すつもりだったが、私たちは生活が苦しいときも木を切ろうとは思わなかった。動物がこの土地にすんでいるのがうれしい」と微笑む。

夫妻は97年から10年間、政府機関の国家森林財政基金(FONAFIFO)と、「PES(環境サービスに対する支払い)」の契約を結び、森林保護への報奨として年間3500ドルを受け取った。当時の1世帯あたりの平均月収の4~5倍の額。セーサルさんは「動植物の密猟者の監視や山道の整備など原生林を守るのにはお金と時間がかかる。契約には助けられた」と話す。

PESは、森林を保護・再生した地主に報奨を支払う仕組みで、96年に導入された。同基金のオスカル・サンチェス環境サービス部長は「森を守る地主が安定した生活ができるようにすることが大切だ」と説明する。森林には、木材を供給する以外に、二酸化炭素吸収による地球温暖化対策▽水源の保護▽良い景観▽生物多様性の豊かさ--の4項目の効果がある。導入までは、地主に収益をもたらすのは木材生産で、樹木を切らずに森を守るための動機づけはどうしても弱くなりがちだった。

PESで契約の対象となるのは、(1)自然にまかせた森林再生(2)植林による再生(3)森を残しながらの営農(4)既存の森の維持--の4種類あり、1回の契約は5年間((2)のみ15年間)となっている。(1)では毎年1ヘクタールあたり41ドル、(4)では64ドルの報奨が得られる。一 方、(2)は最初の5年間に1ヘクタールあたり980ドル、(3)は最初の3年間に木1本あたり1・3ドルが支払われる。さらに、(4)では森が豊富な水源となっている場合と、特に豊かな生態系を持つ場合にそれぞれ16ドルと11ドルが加算される。

08年までに計65万2000ヘクタールを対象に、約8500の契約が結ばれた。支払いの主な財源は、化石燃料に課される税収の3・5%と、世界銀行やドイツ金融復興公庫からの資金援助、企業からの寄付金による。

◇ ◇ ◇

コスタリカでは、1950年代以降、農地や牧草地の拡大のため急速に森林伐採が進み、19世紀初頭に国土の9割を占めていた森林面積は、80年代後半には2割まで減少した。政府は70年代後半、国立公園や自然保護区の指定、植林の推奨などを始めたが、私有地では依然伐採が進んだ。そこで、80年代半ば、植林に対する援助金制度を打ち出し、次いでPESを導入した。これらの施策が奏功し、森林面積は約20年間で5割を占めるまで回復した。

サンチェス部長は「政権交代を経ても、政府は一貫して自然保護に積極的だった。小国だが軍隊を持たないため、教育や自然保護に十分なお金を使える」と分析する。


■生命の宝庫:コスタリカの挑戦 ホルヘ・ロドリゲス環境エネルギー相に聞く


「世界の軍事費の1%未満で(対策は)できる」

コスタリカの森林保護政策や地球温暖化対策の取り組みについて、ホルヘ・ロドリゲス環境エネルギー相に聞いた。

森林が失われると水源も守れず、水が不足し、水質も悪化する。国民の健康や生活、産業活動に悪影響を及ぼす。自然保護に消極的だった国では今、水不足と温暖化の影響で、深刻な事態が起こりつつある。コスタリカは80年代半ば、国連食糧農業機関(FAO)や世界銀行、国際NGOからの忠告を受け入れ、森林政策を転換した。つまり、「森林=木材」ではなく、エコツーリズムや水力発電を振興するための資源と位置付けた。

現在のコスタリカの二酸化炭素排出量は年約800万トン。2021年までに(排出量を吸収量で相殺して実質ゼロにする)カーボンオフセット国家を目指している。環境技術を導入し、産業や交通部門からの排出を減らす。同時に森林による吸収を増やす。吸収量はほぼ目標に達した。企業の意識も高まってい る。実現は不可能ではない。

昨年9月の国連気候変動サミットで、複数の首脳が温暖化対策はお金がかかりすぎると述べていた。これに対し、(コスタリカの)アリアス大統領は、世界で使われる軍事費の1%未満で対策はできると訴えた。(対策が進まないのは)お金の問題ではない。

▲毎日新聞 2010年1月11日(月)

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