2017-11

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「国の規制では乱開発止められない」

■景観守れ まちづくり奮闘 

相模灘を望む神奈川県真鶴町。人口9千人弱の静かな港町を今年5月、韓国ソウル市からの一行10人余が訪れた。

「新しいまちづくりの手法を感じる」「地場の材料をうまく取り入れている」
 
きっかけは、韓国の有力紙が今春掲載した記事だった。「住民主役の草の根デザイン」「目立つ建物はないが、日本で最高のデザイン実験都市」――。記事はこう指摘し、真鶴町をパリと並べて絶賛していた。

真鶴町が景観整備で注目されるようになった原動力は、94年施行の条例だ。特徴は、数値による規制より「言葉」での自制を中心にすえた点。8つの原則と、「豊かな植生」、「舞い降りる屋根」など69のキーワードで、「美の基準」を表す。「美の条例」と呼ばれる。

建築主と町が協議し、美しさを引き出していく。傾斜地では斜面に沿って屋根を架け、昔からある小さな路地を大切に植栽を施す……。

条例に従わない事業者には、公聴会や議会の議決を経て、町が水道の供給やごみの収集などに協力しない措置も取れる。しかし、「一方的に押しつけるのでなく、話し合いで真鶴らしい美しさが生まれる」(町まちづくり課の卜部直也さん)と信じる。

条例に基づくまちづくりは「売り物」になりつつある。

町の中心部に2年前、外壁が淡いピンク色という一軒家がお目見えした。一般住宅に条例を適用した第1号だ。持ち主の都市計画コンサルタント、神谷裕直さん(61)は、高層ビルが無秩序に立ち並ぶ都会が嫌になり、長年暮らした東京・渋谷から夫婦で越してきた。

当初は、旅行で何度も訪れたイタリアの港町に多い赤系統の家を建てようと計画。美の条例のもとで町と協議を繰り返して「彩度を落としたサーモンピンク」に落ち着いた。

神谷さんは言う。「伝統や文化、生活、地形などすべてをひっくるめて景観です。条例にその考えが表れている」。条例施行後、神谷さんのように真鶴に移り住む人も出てきた。

日本一厳しい「美の基準」をクリアした希少な景観美――。昨年、高台に立つマンションがこんな宣伝文句で売り出され完売した。屋根を敷地に合わせて傾斜させ、町特産の小松石をエントランスホールに使った。70平方メートルの2LDKを約4千万円で購入した東京都目黒区の会社員、夏野剛さん(43)は「マンションを買うまで美の条例は知らなかった。相場より2~3割高かったが納得です」と話す。

06年にできた町内の住民団体「海緑鳥(うみどり)」は「美の語らい」と題した催しを定期的に開き、真鶴らしい美について語り合う。代表の平井宏典さん(29)は真鶴生まれの真鶴育ち。「ここに住む自分たちが率先しなければ」と考えている。

・冷ややかな県

美の条例が生まれたきっかけは、バブルの絶頂期へと向かう80年代後半に押し寄せたリゾートマンションブームだった。町内でも高層マンション計画が20棟近く持ち上がり、住民が反対運動を繰り広げ、町長や助役が相次いで辞任。混乱を極めた。

「国の都市計画法や建築基準法の規制では乱開発を止められない。独自の条例で戦うしかなかった」。条例づくりを主導した三木邦之・前町長は言う。

順風満帆だったわけではない。マンション開発業者と建物の高さを巡って紛糾し、条例に基づく公聴会が開かれたこともある。しかし、真の「敵」は思わぬところにいたという。

条例ができたころ、建築確認や開発許可の権限を持つ神奈川県は冷ややかだった。町の要請で条例づくりに携わった五十嵐敬喜・法政大教授によると、条文のすべてにクレームがついた。県は「美の基準」の内容は抽象的すぎて条例にはなじまないとの考えで、法律に定めた規制の「上乗せ」や「横出し」は一切認めないとの姿勢だった。

町への「報復」ともとれる動きもあった。三木さんは「町内の県道工事で、事前に連絡が来なくなった」と明かす。県道には町の水道管などが敷設されており、工事に合わせて管の維持管理ができれば効率的なのに、嫌がらせとしか思えなかった。

美の条例作りが大詰めを迎えていた92年5月。真鶴町長だった三木さんは衆院建設委員会に参考人として出席し、画一的な法律のもとでは独自のまちづくりがいかに難しいかを訴えた。「特色あるまちづくりができるよう、権限をくれませんか」

委員会後の控え室で、ある国会議員にこんな言葉を投げつけられた。「地方に任せたらとんでもないことになりかねない」

・縦の行政も壁

景観保護へ市町村を後押ししようと、政府は05年に景観法を全面施行した。「地域の特性にあった規制ができる」とのふれこみだったが、ほどなく「力不足」が露呈する。

沖縄本島から南西に400キロの石垣島。高さ25メートルのマンション建設計画が持ち上がり、訴訟になっている。

石垣市は07年、景観法に基づく景観計画を作り、全島を景観計画区域に指定。市街地を除き、建物の高さを7~10メートルに規制した。マンションの計画地は高さ7メートル以下だが、業者は市の勧告を無視。都市計画法による規制はなく、景観法も、景観計画区域の指定では高さへの強制力がなかったからだ。

市の担当者は「法律に基づく勧告が簡単に踏みにじられるとは思わなかった」と肩を落とす。景観法にも、高さ規制が強制力を持つ「景観地区」指定の仕組みがあるが、幅広い地権者の同意が必要なため躊躇したという。

御用邸とマリーナで知られる神奈川県葉山町は、早くから景観法を活用したまちづくりを目指してきた。だが、担当者は「有効な手段にはなりにくい」と漏らす。「京都や金沢のように、誰もが認める景観があるなら話は早い。普通のまちの普通の景観をいかに守るか、難問です」。壁となるのは、私権を制限することの難しさだ。

石垣や葉山のように、とにもかくにも動き出した市町村はけっして多くない。根っこには何があるのか。

「国、県、市町村を貫く都市整備部門の縦系列の中で、自治体職員が内向き、後ろ向きになっている。これこそが問題」

全国に先駆けて92年に「まちづくり支援室」を設け、モデルになったとされる大阪府豊中市。市職員時代からまちづくり行政に携わってきた市前助役の芦田英機さんはこう言い切る。

住民の要望に応じ、渋滞緩和のための市道新設を助役の芦田さんが指示しても、担当部署は「国の補助金が付きません」の一点張りだった。芦田さんは「自治体職員に住民側に立っての発想がない。金の分配などを通じて国が自治体をコントロールする仕組みができあがり、自治体もそれに甘えている」。

■ 真鶴町の美の8原則と基本的精神
① 場所 場所を尊重し、風景を支配しない
② 格づけ 私たちの場所の記憶を再現し、町を表現する
③ 尺度 基準は人間。人間と調和し、周囲の建物を尊重
④ 調和 青い海と輝く緑の自然、町全体とも調和
⑤ 材料 町の材料を活かして作る
⑥ 装飾と芸術 装飾が必要で芸術との一体化
⑦ コミュニティ コミュニティを守り育てる
⑧ 眺め 美しい眺めを育てるためにあらゆる努力を

▲朝日新聞 2008年12月19日(金)「自治」をめざして(2)滝沢 隆史


▼以下、2005年のニュースですが、上の記事に関連するので参考までにコピーしておきます。

■神奈川・真鶴町 模索する「美の条例」

入り組んだ海岸線と森の緑で彩られた半島に位置する神奈川県真鶴町。街並みを守るため独自の「美の条例」を持つ。

きっかけは、1988年、町にも押し寄せたリゾートブーム。JR真鶴駅前にできたマンションは即日完売、町役場には一日に5―10件のマンション建設の相談が寄せられる異常事態になった。住民の不安が高まり町は混乱、当時の町長、助役は辞任に追い込まれる。

「このままでは、町はリゾートマンションに食いつぶされてしまう」。マンション開発への強い規制を公約に当選した三木邦之町長(当時)の下、93年、景観を守る切り札として作成したのが「美の条例」だ。

地区ごとに厳しい高さ制限を定めたり、生け垣や地元特産の石を利用し、建物を造る基準などが盛り込まれた。条例制定後、町にマンションは一棟も建っておらず、各地のまちづくり条例の手本にもなった。

ところが、2004年春、難題に直面する。相模湾を見下ろす高台に高齢者向けマンションの建設計画が持ち上がった。町側は「建物の高さなどが条例違反だ」と計画撤回を要求したが、建築基準法に沿い、県の建築確認を得た業者側は「法は順守している。法以上のことを条例で規制するのは、財産権の侵害だ」と真っ向から反論。

町民も「条例を守る会」を結成、反対運動を展開する。条例に基づき2005年1月、業者と町民が意見をぶつけ合う公聴会を開催。しかし、歩み寄りは見られず、町は3月、業者に「条例は地方自治に基づいたものである」と文書で通告した。

これに対する業者側の動きはいまのところみられず、着工の気配もない。「不気味な膠着(こうちやく)状態」(守る会)が続いている。

打開策として町が期待を寄せるのが、6月に施行された景観法。この法律をうまく使えば、条例の精神にそぐわない建築物を排除できる。町は1月、全国初の同法に基づく景観行政団体となった。

「全国に誇れる町の美を守りたい」。街並みを大切にするこの町に興味を持ち、役場に入った卜部直也さん(32)は景観計画策定に取り組む。

▲神戸新聞 2005年7月15日

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