2017-08

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ビオトープは残ったが

■万福寺の森 

「万福寺の森」と呼ばれた里山が、かつては一面に広がっていた。川崎市麻生区、小田急新百合ケ丘駅の北側。灰色のビル群を抜けると、一戸建てや高層マンションが整然と立ち並ぶ扇形の開発地が迫る。造成でむき出しになった土地とこんもりとした森が、開発地の近くに混在している。
「絶滅危惧(きぐ)種のホトケドジョウが生息し、夏にはホタルが乱舞する姿も。都会のオアシスでした」。市民グループ「新百合のホトケドジョウを愛する会」代表の中井さゆりさん(48)がこう懐かしむ“里山”の現在だ。

約37ヘクタール、東京ドーム8個分の森に開発話が持ち上がったのは約17年前。環境アセスメントをへて、2000年に地権者らが開発を進めるため土地区画整理組合を設立。組合は大手不動産会社の支援を受け、翌年着工した。造成は08年の事業完了を前にほぼ終了。今では人家も増え、最終的に約7千700人が生活する見込みだ。
「都市と自然の調和」が開発のコンセプトに掲げられ、区域に占める公園緑地は法が求める6%の2・5倍の約16%。民有緑地などを含めると、約4分の一が公園緑地となり、この開発地のセールスポイントになっている。
「愛する会」は造成を前に、自然が特に豊かな湿地帯の一部を生かした開発を提案。最もわき水の多い0・7ヘクタールの土地をそのまま残してほしいと申し入れた。いろよい返事ではなかったというが、自然のわき水などを生かしたビオトープが設けられ、ホトケドジョウも生息する。中井さんは「一番残してほしい所はなくなってしまったが、質の高いビオトープができただけでも奇跡的」と喜ぶ。
一定の自然が確保された理由について、地元不動産業者は「土地が切り売りされるより、一体的に開発されたことで、緑が多く残った」と分析し、ある地権者は「孫のためにしっかりしたものを残したかった」と、市の開発担当に漏らした。
ただ、ビオトープはマンション敷地内にあり、管理組合が運営する。柵に囲まれ、イベントや環境教育以外、普段は住民も入れない。貴重な生き物が盗まれたり、外来種が捨てられて生態系が壊されたりする恐れがあるという理由だが、気軽に自然とふれあえる里山とは違う。造成後にあらためて植樹された緑地も多く、「昔の雑木林と違い、タヌキなどはいなくなってしまった」と、さびしがる住民も。
「ビオトープや森が今後、どうなっていくか注視したい」と話す中井さんは、「地元住民として、自然との共生に取り組んできたのに、私たちの方がよそ者になってしまった気がする」と、複雑な胸中ものぞかせた。
都内の開発業者によると、企業所有のグラウンドなど大規模開発の余地があるため、新百合ケ丘駅周辺の開発はどんどん進んでいるという。この開発業者は、都市近郊の里山の現状をこう説明した。
「都会の中心部に近い森林ほど、開発業者から見れば絶好の大規模マンションの好適地に映る。私有地なら、開発業者間の奪い合いになっているのが実情だ」

◇ビオトープ ドイツ語で「生き物」と「場所」を意味する言葉からできた造語。昔からいた野生の生き物が暮らす地域特有のまとまった場所を指す。日本では、限られた地域に、本来そこにあった動植物の生息環境を復元する試みを意味する場合が多い。各地の公園や河川敷の造成事業、環境学習を行う学校の中などにつくられている。

▲東京新聞2007年10月2日(火)

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