2017-07

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景観が変わる -下- 日経新聞




景観が変わる**下 2005年5月5日(木)日本経済新聞「経済教室」より
by 松原隆一郎(東京大学教授 社会経済学が専門)

戦後において支配的だった経済成長至上主義や価値相対主義の下で、日本の景観の無秩序化や全国的な均質化が進んだ。しかし、昨年末に景観法が施行され、景観を維持・向上する観点から建築物を規制できるようになった。日本の景観は一大転換期にある。

■ 一律の法規制で地方らしさ喪失
景観は、様々な要素とそれらのつながりによって構成されている。それは自然を背景に、計画的に造られたものと個々の建築物とが織りなす一種の「コンテキスト(文脈)」として認識されている。
日本では、計画的な部分として都市計画法や建築基準法という法規制があるが、個々の建築物はほとんど周囲の文脈を意識しないで自由に建てられる傾向がある。
ところが一方で、法は全国一律に適用され、地方らしさにかかわらない。そのうえ流行に沿う商業施設が増えたため、地方らしい景観が失われていった。
典型的なのは、郊外の国道沿いの眺めであろう。そうした商業施設は一定の商圏を持つから、数キロ行くと再び同じひとそろいの光景に出会うことになる。
さらに日本の景観を特徴づけるものとして、電柱および架空の電線がある。多くの日本人は気にかけることもないだろうが、空を網のように電線が覆い、狭い歩道に電柱が居座っている光景は、日本以外では韓国と台湾くらいでしか見かけない。
景観の悪化などは、経済成長という至上命題に比べればコストにすぎないとみなされたのである。
■ 価値相対主義 均質化を促進
日本の景観が雑然としつつも均質的になる背景として、特定の景観を良しとする価値観は個人的であり相対的なものにすぎない、とみなされたことがある。それを「価値相対主義」と呼ぶならば、それが浸透したせいで好き勝手な建築物を建てることができるようになり、結果的にはどこに行っても同じような風景ばかりになってしまった。
80年代には中曽根政権のもとで規制緩和が行われた。バブルは都市計画では想定しなかった地域にも及び、規制の対象外である山の美しい斜面にリゾートマンションが建てられ、全国で紛争が起きた。90年代になると、政府は容積率の規制を骨抜きにするような緩和策を打ち出していった。
それを受け、都心では企業が売却した工場、倉庫などの跡地に、超高層マンションが相次いで建設されるようになった。そのうえ小泉政権が景気回復策として掲げた「都市再生」では、容積ボーナス制度や空中権売却などの手法によって、適用地区の高さ規制はなきがごときものになりつつある。「建築無制限」、高さの「青天井」が実現しているのだ。このように超高層マンションが乱立すれば、スカイラインの秩序は失われてしまう。
「都市再生」政策は、あくまで経済効果を狙う点に特徴がある。都市において経済性はその一要素にすぎないが、景観などの文化面がこれほど無視される都市論はまれである。そして全体の計画などまったく存在しないまま、現実に都市の景観は崩壊しつつある。
■ 景観改善への動きが相次ぐ
電線については国土交通省が電線類地中化を86年度から推進しており、2003年度末までに5500キロが埋設された。さらに「国立マンション訴訟」では東京地裁判決で「景観利益」という概念が提示された。(控訴審の東京高裁は認めず)
さらに重要なのが、景観法である。これまでは、建築基準法や都市計画法などに違反していなければ、景観条例を盾にしてもマンション建設を規制することは困難だった。今後は、景観計画に違反する業者には、刑罰までが加えられる。これまで景観を維持するための規制は、条例しか根拠がなかった。条例は根拠となる法を持たなかったから、最終的には憲法によって土地所有権が保障されているマンション業者が優位にあった。ところが景観法は「法」であるから、これからは地方によっては条例がそのまま格上げされて法と同じ扱いになる。マンション建設に際しても、これまでのような敗戦一方ではなくなるだろう。
■ 脱「東京」を模索へ 地方経済再建の足がかり
地方の歴史や風土を誇るような価値観は、実質的には東京的な価値観によって変質させられてきた。それゆえ景観計画を提起するためには、地方自治体は何がその土地で「良き眺め」なのか議論しなければならない。東京を追いかけることで個性をなくし病弊していった地方経済を再建するのは、実は景観という非経済的な背景あってのことだろう。
現に、電線地中化と建物を景観に合わせて造り直す「修景」を重ねてすっきりした町並みとなった長野県小布施町などは観光客を集めている。
日本の景観は、一大転換期におかれている。

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